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【第961話】 「奇跡」 2014(平成26)年9月1日-10日

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 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第961話です。

 26年前の4月2日、場所は甲子園。春の第60回選抜高校野球、山口代表の宇部商と愛知代表の中京が対戦しました。中京の木村投手は9回一死まで、一人の走者も出していません。あと二人というところでヒットを打たれ、完全試合という大記録はなくなりました。二死後、逆転2点本塁打を打たれ敗戦投手となり、天国から地獄に突き落とされたかのようでした。

 昔も今も奇跡を起こす高校球児、その奇跡の陰に泣く高校球児がいます。今年の夏の第96回全国高校野球選手権大会でも奇跡がありました。地方予選の石川大会で、星稜と小松大谷との決勝戦。星稜は8回まで、2安打のみで0‐8とリードされ、敗色濃厚です。星稜の今年のチームの合言葉が「必ず笑う」という「必笑」でした。9回裏の攻撃は、「笑えば前向きになれる」と、笑顔で臨みます。そして、怒涛の攻撃が幕を開け、打者13人を繰り出し、9点を奪い逆転サヨナラ勝ちとなりました。

 甲子園でも奇跡は起きました。岐阜代表の大垣日大は茨城代表の藤代に、1回表にいきなり8点を先取されました。しかし、徐々に点数を加え、12-10で逆転勝ちをしました。甲子園で8点差の逆転は過去に一例あるだけです。

 一般的に見れば、奇跡としか思えないような試合結果です。しかし、勝った当事者からすれば、そこに至るまでの汗と泥にまみれた練習は誰にも負けないという自負があったはずです。ただ笑顔だけで勝てるほど、高校野球は甘くありません。どんな時でも自分の持てる力を発揮できるためには、究極の状況を想定しての練習の積み重ねが必要でしょう。その上で、持てる力以上の結果を出すことができたとすれば、それは「後がない」という思いを常に意識しながらプレーできたからではないでしょうか。

 高校野球は一度負けたらそれで終わりです。それ故に思わぬ力が湧き出ることもあるでしょう。「決して諦めないぞ」という底知れぬ高校生の力です。また高校生という若さゆえに、負けられないということで、力が入りすぎて、普段の実力を出し切れないということもあるでしょう。初回8点を先行した藤代の選手は「声援が重圧となった」「縮まる点差がこわかった」と言っています。

 さて、高校生と言えばまだ十代半ば。これからの人生がずっと長いわけです。敢えて酷なことを言えば、奇跡を起こした方も、起こされた方も、それに囚われ過ぎないことです。栄光も挫折も生涯ついて回ったとしても、それが人生のすべてではありません。その事実をこれからの人生にどう転じていくかです。手に汗を握った試合でしたが、終わったら手のひらには、何も残っていません。「放てば手に満つ」グローブにボールが入ったままでは、次のボールを受けることができません。そして、人生のキャッチボールはこれからがプレーボールです。

 それでは又、9月11日よりお耳にかかりましょう。

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