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【第949話】 「船長」 2014(平成26)年5月1日-10日

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 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第949話です。

 「津波てんでんこ」とは大船渡市の津波災害史研究家山下文男さんが、幼少の時に父母から聞いた言葉として紹介したことで広まったそうです。「てんでんこ」は「てんでんばらばら」の意で、自分だけでも高台に逃げろという意味でもあるでしょうが、自分の命は自分の責任で守れという教訓として使われています。

 東日本大震災で1200人を超す死者・行方不明者を出した釜石市では、3千人近い小中学生のほとんどが無事に避難できました。生存率99.8%で「釜石の奇跡」と呼ばれています。それには日頃から「津波てんでんこ」の言い伝えに基づいた防災教育があったからと言われています。年に何回も避難訓練をしたり、津波経験者の話を聴いたり、映像で津波の恐ろしさを学んでいたのです。

 さて、お隣韓国には「てんでんこ」なる言葉があるかどうかは分かりませんが、「津波てんでんこ」という言い伝えがあるとは思えません。4月16日に韓国の珍島(チンド)付近で旅客船セウォル号が沈没するという事故がありました。乗員乗客476人が乗船していました。その中には300人を超える修学旅行中の高校生が含まれています。救助活動は難航していて、4月末現在で187人の死者を確認しているものの、100人を超える行方不明者がいます。事故そのものの重大性は勿論ですが、別の点で非難の的になっているのが、「津波てんでんこ」を誤解したかのような船長の行動です。

 津波と沈没事故を同じ土俵で論じることはできません。というより、船の中で船長はいかにあるべきかが問題になっています。イ・ジュンソク船長は、事故当時操縦室を離れていただけでなく、多くの乗客を残して脱出。救助船の搭乗者名簿に「一般人」と記入して身分を偽っています。更に治療を受けた病院では、海水でぬれた紙幣を床暖房で乾かしていたといいますから、「一般人」以下というべきではないでしょうか。韓国の船員の法律にも「船長は緊急時に際しては、人命救助に必要な措置を尽くし、旅客が全員降りるまで船を離れてはならない」とあります。

 韓国の朴槿恵(パククネ)大統領は、船長の行為に対して、「殺人にも等しい行為」と批判しました。船長は乗員乗客の命を預かっている立場です。自分だけ「てんでんこ」よろしく勝手に逃げ出しては、他の命を無視したことになります。一方「津波てんでんこ」の教訓は、私たち一人ひとりが地球号という船の乗客であり、船長でもあるということです。いずれにしても、海を相手にする者は、舵取りを誤らぬよう、普段からの心構え訓練は大切です。

 ここでお知らせ致します。東日本大震災を語り継ぐテレホン法話集の第2集が出版されました。『一歩先へ 二歩先へ―3.11その先へ―』定価1000円。ご希望の方は徳本寺までご連絡ください。電話0223-38-0320です。
 それでは又、5月11日よりお耳にかかりましょう。

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