法話 〜3分間心のティータイム〜イメージ

【第948話】 「経行(きんひん)」 2014(平成26)年4月21日-30日

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 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第948話です。

 お経の「経」という字は、織物の縦糸のこと。そして、「経」に「行く」という字を書いて、「経行(きんひん)」と読み、縦糸の如くまっすぐに歩むことを意味します。禅宗では、坐禅の合間に、心身を整えたり、眠気をとるために、一定時間ゆっくり歩くことを経行と言います。

 経行はいわば歩く坐禅ですので、それなりの作法があります。坐禅と同じように息を整えて、手はぶらぶらさせずに、胸元で組みます。そして独特なのは歩き方です。大本山總持寺を開かれた瑩山禅師は『坐禅用心記』の中で、「経行の法は一息つねに半歩なり」とお示しのように、一呼吸の間に半歩だけ歩を進めるというものです。

 経行の起源は、インドで行われていた、直線上をゆっくり往復することによる病気療養や健康法にあるそうです。修行の一環としても行われていました。その効能として、深い思慮ができるようになる、病気にかかりにくくなる、消化がよくなる、長時間坐禅ができるようになる、そして遠くまで行けるようになると挙げています。

 修行駆け出しのころの坐禅は辛いことばかりでした。足が痛い、眠い、じっとしているという我慢ができない、頭をからっぽにしなければならないのに、妄想が頭をもたげてきます。そんな時、経行の時間に救われたものです。進んでいる実感がない程、ゆっくり歩を進める間に、心身が解きほぐされていく感じがします。長時間の坐禅に耐えた後ほど、それを実感します。

 さて、東日本大震災から3年が過ぎて思うことは、想定外と言えるような劇的な災害はあっても、そこからの劇的な復興というのも想定外だ、ということです。何十年何百年とかけて築いてきた人間の営みを一瞬にして破壊されました。もし劇的な復興があるとすれば、震災前までに時間を戻すという、あり得ない奇跡にすがるようなものです。もはや、うつむいている人はいないとしても、個々の復興の実感としては、進みが見えない小さな歩みに、もどかしさを感じるばかりかもしれません。

 坐禅で感じた辛さと被災の辛さは比較できるものではありません。しかし、経行というゆっくり歩くことによる効能を、被災地でも感じてもらいたいものです。ヨーロッパの格言にも「ゆっくり行く者が遠くまで行く」とあります。復興が遥か遠くの方にあるということではありません。自分たちの今にこだわるだけでなく、未来の子孫にまで繋がる復興を願いつつ、歩みを進めるということです。そのためなら一息つきながらでもいいのです。一歩でなくても半歩でもいいのです。遠くを見据えながら歩みを止めずに、経行すれば、気品溢れる未来が待つことでしょう。

 ここでお知らせ致します。東日本大震災を語り継ぐテレホン法話集の第2集が出版されました。『一歩先へ 二歩先へ―3.11その先へ―』定価1000円。ご希望の方は徳本寺までご連絡ください。電話0223-38-0320です。
 それでは又、5月1日よりお耳にかかりましょう。

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