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【第947話】 「クジラらしく」 2014(平成26)年4月11日-20日

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947.JPG お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第947話です。

 鯨は肉は勿論、骨や髭まで満遍なく利用できるといいます。初期の歯ブラシは、鯨の髭だったそうです。捕鯨は日本の文化といえます。今から100年ほど前の明治45年春先、当時の新潟県柿崎村上下浜に漂着した大きな鯨が、村にとってまさかの海からの贈り物になりました。それは全長30メートルで100トンもあるナガスクジラでした。その3年前、村の上下浜尋常小学校は、嵐の被害に遭い倒壊したのですが、再建の資金調達に頭を抱えていました。

 網元の家に残る「鯨売上帳」には、村の代表が鯨の扱い方について開いた会議の様子、肉の分量や売上金の数字まで、克明に記されています。そして冒頭に「この鯨を村の共有とし、協力すること」という宣言文のようなものがあります。

 こうして、捕鯨の経験のない村人が、刃物や大工道具などを持ち寄って、6日間かけて鯨を解体しました。女衆が解体したものを荷車に積んで行商をして歩きました。遠くは長野県境までも行き、7日間で完売したのです。すべては子どもたちと村のためという一念があたからでしょう。「鯨を売って学校を建てた」という言い伝えで、現在の上下浜小学校は「鯨学校」と呼ばれています。

 さてオーストラリアの「日本は調査捕鯨に名を借りて違法な商業捕鯨をしている」という訴えに対して、先月31日、国際司法裁判所は南極海での日本の調査捕鯨中止命令の判決を下しました。最大1035頭の捕獲が認められている現在の調査捕鯨は「科学的目的とは言えない」という判断です。

 捕獲事業を担うのは、一般財団法人「日本鯨類研究所」です。ここに農林水産省は東日本大震災の復興予算の中から21億9千万円を支出して、被災地とは直接関係のない「流用」であると認定されました。復興予算を「流用」した理屈というのは、調査捕鯨が妨げられると鯨肉が手に入らず、被災した宮城県石巻市の缶詰工場などの再興が滞るというものでした。しかし、その実体は捕鯨量が減少して、運営が悪化した日本鯨類研究所の赤字の穴埋めに使われたのです。

 調査捕鯨に名を借りた商業捕鯨と世界から断じられ、復興予算の流用との批判を浴びた日本鯨類研究所の捕鯨事業は、大きな転換を迫られています。大震災で風前の灯となった文化はたくさんありますが、捕鯨の文化はそれとはまったく別です。是非真剣にこの文化を残すべく、研究に勤しんでもらわなければ被災地は踏んだり蹴ったりです。そして鯨学校の逸話を思えば、まさに「クジラ(げい)は身を助く」です。鯨学校ならぬ鯨復興と呼べるような「鯨」の訪れを少し夢見ながら、「クジラらしく」大きな復興という成果を捕獲できるように今日も立ち向かいましょう。

 ここでご報告致します。3月のカンボジア・エコー募金は、149回×3円で447円でした。ありがとうございました。

 それでは又、4月21日よりお耳にかかりましょう。

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