法話 〜3分間心のティータイム〜イメージ

【第940話】 「土を動かす」 2014(平成26)年2月1日-10日

再生ボタンをクリックすると 住職が語る法話を聴くことができます

法話の再生940.mp3


940.jpg お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第940話です。

 今から2500年ほど前のお釈迦さまの時代、文字はなく、そのお言葉であるお経は記録されませんでした。詩のような形にして暗記して覚え伝えました。後に文字に書かれて残り、多くの人に写されて広まりました。文字がなければ仏教は今に至らなかったかもしれません。

 ところで昨年暮れ、ここ山元町坂元の熊の作遺跡から東北最古級の木簡が出土し、全国ニュースになりました。東日本大震災で被災したJR常磐線の内陸移設に伴い、宮城県教育委員会が遺跡の発掘調査をしている中で発見されたものです。木簡は、長さ31.9cm、幅3.6cm、厚さ0.7cmで、「信夫郡(しのぶぐん)安岐里人(あきのさとのひと)」など墨書されています。それは現在の福島県の福島市と川俣町の境付近で、そこに本籍を持つ男性を管理するための名簿とみられています。大宝律令(たいほうりつりょう)の郡里制(ぐんりせい)が施行された時期の表記方法であることから、西暦701-717年の間に使用されたと考えられます。今から約1300年前のことです。

 安岐里は熊の作遺跡から直線距離で40km南西に位置します。遺跡は製鉄に関連するものと考えられ、木簡はその作業に他の郡の人々が、動員されてきたことを示す貴重な資料となるようです。文字には時を超えて伝え、想像をかきたてる力があります。千年に一度と言われる大震災を縁として発掘された木簡によって、千年前の故郷の一部を垣間見ることができるというのも、複雑な思いがあります。それにしても、長い年月の間に、人は縁により、移動し定住するということを繰り返していたのかもしれません。当然、その土地も縁により様々に変容しています。この故郷で製鉄が行われていたなどと、これまで想像もできませんでした。

 さて、大震災の津波により町内の中浜地区のほとんどは災害危険区域となり、多くの方が移住を余儀なくされています。その地区にあった徳本寺の中浜墓地も壊滅状態となり、やむなく移転することにしました。その場所は本堂に隣接する境内地内です。樹木が生い茂る小高いところで、樹木を伐採し、山を均(なら)して平地にする造成工事を施さなければなりません。

 昨年4月から伐採作業に入りました。機械の力で、大木でもあっという間に倒されていきます。樹木がなくなってしまうと、景色は一変します。何百年もうっそうとした山であったところが、こんなに日が当たるようになるとは誰も想像しなかったでしょう。更にその想像を超えて、何台もの重機がうなりをあげて、夥しい量の土を動かしました。こうして墓地となる平地が整いました。

 山元町は現在、1日3千台のダンプが行き交い復興に向かっています。その動いた土の量は計り知れません。例えば千年後に、何かの縁で、今回新しくなった土の下を掘り起こすことがあった時、大震災以前の地面に触れて、子孫はどんな想像をするでしょう。私たちは大震災にも負けず、力の限り土を動かし、新しい町を作り生き抜いたということを、木簡よりも確かのものに残していきたいものです。2500年を経ても、お経がしっかり伝わり、人々の心の支えになっているように・・・。

 それでは又、2月11日よりお耳にかかりましょう。

法話のご案内 一覧