法話 〜3分間心のティータイム〜イメージ

【第924話】 「お盆とイノシシ」 2013(平成25)年8月21日-31日

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 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第924話です。

 お盆には遠くからでも時間とお金と体力をかけて、故郷に帰りお墓参りをするというのは、日本人の原風景かもしれません。ところが今年は、徳本寺の寺前墓地には、なんとイノシシまでがお出ましになりました。お盆に入るちょっと前の8月5日のことです。お墓に生えている山百合の根を漁っていたようなのです。

 イノシシの被害については、だいぶ前から報じられていました。たいてい里山付近での話でした。まさかお寺では、幽霊は見てもイノシシが出現するとは思っていませんでした。これは寺の周りの環境というより、町全体の環境の変化のためかもしれません。一つは、里山の近くを高速道路が通ることになっているため、現在急ピッチで工事が進められています。道路にかかるため、屋敷が分断された檀家さんもいます。里山を棲家としていた生き物が、そこを追われることもあるでしょう。「兎追いし彼の山」ならぬ、イノシシ追い立て道造り、でしょうか。

 加えて東日本大震災以来、故郷は景色が一変しました。その復旧工事がこれまた急ピッチで行われています。防災林復旧工事とか海岸工事という旗をくくりつけたダンプカーが、内陸部の採取場から、土砂を積んで連日町内を走っています。工事車両の通行量は一日約3000台にもなるそうです。これまで町内の道路で、交通渋滞などということはありませんでしたが、最近はのんびり構えてはいられません。

 これだけの環境の変化があれば、生態系に何らかの影響があっても不思議ではありません。イノシシはじめ野生の生き物も、生きるがために必死でしょう。勿論それ以上に深刻なのは、被災している人たちです。山元町は海岸沿いのかなりの範囲が、災害危険区域となっています。これまで慣れ親しんだ土地を離れなければならない家は何百軒にもなります。

 山元町のある行政区では、区の大部分が災害危険区域となり、一軒も残っていません。町内外にばらばらに移転しています。「区を解散するしかないですよ」と、区長さんが言っていました。隣組をはじめとするコミニュケーションは津波で流されたも同然です。

 お盆にお墓に出現したからといって、イノシシに信仰心があるはずはありません。ただ餌を求めて生きるが為です。人間は「パンのみで生きるにはあらず」ではありませんが、人と人とが支え合って生きています。何よりお墓にお参りするとは、私が生きているのは、ここに眠るご先祖さまのおかげであると思うからです。どんなに住まいする環境が変わろうとも、ご先祖さまから受け継いだこの命を活かして生きていくんだと、強く意識できるのがお盆のこの時です。大震災から3度目のお盆は、猪突猛進的な環境の変化を受け容れつつ、変わらぬ人の心を有り難く感じたことでした。

 それでは又、9月1日よりお耳にかかりましょう。

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