法話 〜3分間心のティータイム〜イメージ

【第918話】 「ケンバヤ」 2013(平成25)年6月21日-30日

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918.jpg お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第918話です。

 「木偶(でく)の坊」とは、自分では何もできない人を指し、あまり良い言葉ではありません。しかし、もともと木偶とは、木彫りの人形のことです。そして、四国徳島には「阿波木偶箱廻し人形芝居」というものがあります。人形浄瑠璃芝居を路傍で演じるものです。数体の木偶が入った箱を天秤棒で担いで、人形芝居を演じて歩くのです。残念ながら、昭和初期になくなってしましました。

 その後、「阿波木偶箱廻しを復活する会」の方々が、ただ一人となった伝承者に弟子入りして、徳島の正月儀礼として定着した「三番叟まわし」を、受け継ぐことができました。祝福芸のひとつで、木箱に千歳・翁・三番叟とえびすの4体の木偶を入れて門付をして、正月に家々に福を運びます。「五穀豊穣」「無病息災」「家内安全」「商売繁盛」などを祈願し、新年を迎えた人々に、明るい展望と生きる勇気をお授けするというものです。えびすさんに体の痛いところや、具合が悪いところを触っていただくと、楽になるという御利益もあります。

 そんな「阿波木偶箱廻し人形芝居」の方が、一昨年の震災当初に、はるばる四国から山元町の仮設住宅に人形ボランティアとして支援物資を携えて来て、人形芝居を披露して下さいました。そのご縁で、今月8日にも再び同じ仮設住宅を訪ねて下さいました。最近はボランティアで訪れる方が少なくなっている中、忘れずに縁を繋いでいただけるというのは、ほんとに有り難いことです。

 冒頭、司会の方から「今日はお正月と思って下さい。大震災という辛いことがあったけど、それは全部私に預けて下さい。今日は新しい日になったのです。えびすさんがみなさんに福をお与えします」と、切り出しました。そして木偶遣いの人が、箱の前で「オン ケンバヤ ケンバヤ ウンバッタ ソワカ」とお称えしたのには、驚きました。これは「荒神真言」という荒神様に対する呪文のようなものです。荒神様は不浄・災難を除去するといわれ、台所と竈(かまど)が最も清らかなところから、竈の神様とされています。

 実は私が修行した大本山總持寺では、毎朝のお勤めで、この荒神真言をお称えしています。總持寺では「三宝荒神」をお祀りしているからです。三宝とは仏・法・僧で、「仏」とその教えの「法」、教えを説く「僧」のことをいいます。總持寺の守護神として、仏法を守護し、本山を鎮護する働きをしています。そして荒神真言の「オン ケンバヤ ケンバヤ ウンバッタ ソワカ」とは、「おお 動神よ 動神よ 怒りて 魔障を除きたまえ めでたし」というような意味になります。ここで動く神「動神」とは、地震を司る神だという説もあります。

 「ケンバヤ」が地震を司り災難を除く神というからには、「阿波木偶箱廻し人形芝居」で称えられた荒神真言によって、この度の大震災で受けた災難を乗り越える力をも与えられたかのようでした。なにせ箱から出てきた木偶のボーとした顔は一つもなく、愛嬌たっぷりです。みんなを笑顔にして、あたり一杯に福を振りまきソワカ(めでたし)でした。

 それでは又、7月1日よりお耳にかかりましょう。

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