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【第856話】 「モッタイナイ」  2011(平成23)年10月1日-10日

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 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第856話です。

 「ツナミ」は日本語ながら、国際語になった言葉のひとつです。今から65年前の1946年、アリューシャン地震が起きた時、ハワイで津波による大きな被害がありました。その時現地の日系人が津波という言葉を使い、ハワイに広まりました。英語には地震がもたらす波を表わす言葉がなく、その後「ツナミ」は学術用語になり、国際語化したと言います。

 最近国際語化した日本語といえば、「モッタイナイ」でしょう。アフリカ人女性として初めてノーベル平和賞を受賞したケニアの環境活動家ワンガリー・マータイさんが、2005年に来日した際に、「モッタイナイ」という日本語に感銘を受け、世界に広め、実践を呼びかけました。そのマータイさんが9月25日に病気のため亡くなりました。71歳でした。

 1977年に環境保護と貧困女性の社会進出を目的として「グリーンベルト運動」を始めました。7本の植樹で始まった運動は、アフリカ20カ国以上で計3千万本に及ぶ植樹を展開しました。そんな彼女だから「モッタイナイ」という言葉の響きが新鮮であり、言葉に込められた思いの尊さに打たれたのでしょう。「勿体」とは重々しいこと、威厳があることを意味します。そこから「勿体ない」は有能な人間や物事が粗末に扱われて惜しいということいいます。また、上のものに対して恐れ多い、恐縮だというようなときにも使われます。

 外国語にはそのような意味合いを持つ言葉はないということを聞いたことがあります。しかし、肝心の本家本元では、そんな言葉があっても無いに等しいような生活をしていました。そして、この度の大地震・大津波で、私たちはどれほど「勿体ない」を言い尽くしても言い尽くせないほど、多くのものを失ってしまったのです。失ってみれば、その家には自分の分身のような品々が山ほどあったことに気づきます。農機具や自動車はまさに、自分の手足同然です。それらが、何の予告もなく一瞬にして流されてしまうとは、これ以上勿体ないことはありません。

 この度の大震災で被災した車両は、宮城県だけでも推計14万6千台になるとか。こんな話を聞きました。あるところで自動車をスクラップにする前に、廃車同然の車の山を前にして、報恩供養の法要が行われたそうです。それは今まで「モノ」としか思っていなかった車に対して、命を感じたからでしょう。あまりに変わり果てた姿に、これまでの働きを思ったとき、感謝せずにはいられなかったのです。素直に「おかげさま」と手を合わせたことでしょう。日本人は古来、モノにも命を感じてきました。どんな命も重々しく尊厳のあるものです。だからこそ「勿体ない」の言葉が生まれたのでしょう。勿体ぶって言うわけではありませんが、次に国際語化したい日本語は「おかげさま」ではないでしょうか。

 それでは又、10月11日よりお耳にかかりましょう。

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