法話 〜3分間心のティータイム〜イメージ

【第855話】 「りんごラジオ」  2011(平成23)年9月21日-30日

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 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第855話です。
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 「早坂さん、今私『りんごラジオ』にいます。時間があったら来ませんか」と、突然の電話。しかも相手はあの永六輔さんです。「りんごラジオ」とは、我が山元町で東日本大震災から11日目に立ち上がった災害臨時FMラジオ局のことです。その素早い開局や的確な情報提供で、一躍全国的に注目されました。その中心となったのは高橋厚さんです。元アナウンサー出身とはいえ、あの混乱期に情報伝達の使命感に燃えた行動力には脱帽です。

 さて、永六輔さんとのご縁は、ちょうど20年前に私共が主催する曹洞宗の当世寺子屋講座にご出演いただき、山元町にお越し下さって以来のことです。その縁を忘れずに、山元町のこの度の被災状況をたいへん心配され、訪ねて下さいました。中でも「りんごラジオ」の存在は、気になるところだったのでしょう。電話で誘われるままに、私も「りんごラジオ」のマイクの前で、永さん高橋さんとお話する機会をいただきました。

 ひとしきり、ラジオの魅力のことになった時、テレビよりも「ラジオ人間」を自他ともに認める永さんは、「テレビは人を大きく映す。出ている人も、自分はたいした人物だと錯覚することがある」と、最近黒い噂で突然タレントを辞めた人の話をしていました。そして「ラジオは等身大で、ありのままに伝えられるから好きなんだ」とも仰っていました。確かにテレビに採りあげられたというだけで、ある種の箔がつくことがあります。またテレビは制約があり過ぎて、言いたいことが言えなかったり、一般の人が気軽に参加し難いということもあるかもしれません。

 思い起こせば、震災当時は、山元町は全滅したなどという情報も流れた程、通信手段が寸断されていたのです。今どき情報伝達が不可能な状態で日常生活を営むことは、暗闇で暮らすようなものです。正確な情報を伝えるということは、暗闇に明かりを灯すほどの重要性があります。その明かりを頼りに、私たちは進む方向が分かります。

 『修証義』というお経の一節に、「菩提心を発(おこ)すというは、己(おのれ)(いま)だ度(わた)らざる前(さき)に一切衆生を度(わた)さんと発願し営むなり」とあります。仏ごころをおこすとは、自分のことはさて置き、すべての人の幸せを願って行動することですと説いています。時恰もお彼岸です。彼岸とは穏やかな生き方を願って仏ごころをもって、今なすべきことに精進しましょうという人のいる世界です。

 半年前は惨憺たる状況の中で迎えた春の彼岸でした。誰もが彼岸などいう心持になれませんでした。しかし、人々を彼岸に渡さんがために、等身大の情報を発信し続けてきた「りんごラジオ」のおかげもあり、この秋の彼岸は、無理に自分を大きく見せる生き方をしなくてもいいのだと思った人も多かったのではないでしょうか。命あって生きているということこそが何よりの等身大なのですから。今後も「りんごラジオ」の人後に落ちない活躍を期待しましょう。

 それでは又、10月1日よりお耳にかかりましょう。

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