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【第826話】 「金星(きんぼし)」 2010(平成22)年12月1日-10日

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20101201.jpg お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第826話です。

 宇宙航空研究開発機構の探査機「はやぶさ」の約7年間に及ぶ宇宙の旅は、まさに天文学的数字の60億キロというものでした。小惑星「イトカワ」を探査する目的で2003年5月に打ち上げられ、今年6月地球に帰還しました。2005年11月にイトカワに着陸したものの、その後1年ほど通信が途絶え、行方不明となるなど、様々なトラブルを克服しながら、予定より3年遅れての帰還でした。

 しかし、苦労は報われました。はやぶさが持ち帰ったカプセル内の微粒子は、小惑星「イトカワ」のものだということが解りました。約1500個の微粒子は、大きさがほとんど0.01ミリ以下という小さいものでしたが、はやぶさ本体が着陸した際の衝撃で巻き上げられたもののようです。電子顕微鏡で一粒ずつ調べたところ、地球上の鉱物とは異なる成分であることが確認されました。

 今後、詳細な分析が進められると、微粒子がどれだけの熱を受けたかがわかり、小惑星のでき方の謎に迫ることができるとか。イトカワは太陽が誕生したころにできた姿をとどめている「太陽系の化石」のような存在なのだそうです。そのため今回の微粒子の分析は、太陽系の成り立ちの解明につながるという画期的な結果が期待されています。

 さて、仏教も宇宙との関わりなしには語れません。ご存じのように、12月8日はお釈迦さまがお悟りを開かれた成道会(じょうどうえ)即ち仏教の誕生日です。2500年も前のことです。お釈迦さまはそれまで、6年間山に籠って難行苦行を重ねていました。しかし、そのようなことでは、目指す心の解放という解決にはならないという思いに到ります。そこで、山を下り、大きな菩提樹の根元に草を敷き、坐禅三昧に入ります。7日間坐り続け、12月8日の暁(あけ)の明星つまり金星を見て、忽念として心の中に光が差し込んだような境地になりました。こうしてお悟りを開かれたのです。お悟りとは、乱暴な言い方をすれば、難解な問題に取り組んで、何日も苦しんだ後に、突然に答が解ったときのあのスッキリ感に似ているかもしれません。

 お釈迦さまのお悟りは、直接的には金星の小さな光に触発されたと言えるでしょう。探査機「はやぶさ」が持ち帰った小さな粒も、太陽系の謎の解明につながるかもしれません。何事も求める強い意志があれば、困難を克服し、またどんなささやかな状況の中からでも、真実を見出すことができるというものです。はやぶさが月以外の天体に着陸し、小惑星の物質を世界で初めて持ち帰ったのは「大金星」だと称えられています。私たちもそれぞれの道で精進し、お悟りの境地を求め、お釈迦さまと同じように、すべての執着を離れて、真の安らかな心もちになれたら、金星(きんせい)ならぬ、人生の金星(きんぼし)を得たも同然です。それは金銭を超えた天文学的ともいえる大きな価値があることなのです。宇宙の話だからと言って、上の空で聞かないで下さい。

 それでは又、12月11日よりお耳にかかりましょう。

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