法話 〜3分間心のティータイム〜イメージ

【第825話】 「平常心」 2010(平成22)年11月21日-30日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第825話です。

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体操の平均台は幅10センチ高さ1.2メートル長さ5メートルだそうです。ちょっと次の平均台を想像してみて下さい。長さはそのまま5メートルで、幅は倍の20センチ、高さはゼロ、つまり地面に着いたままの平均台です。これなら誰でも渡ることができるでしょう。目を閉じても可能かもしれません。しかし、一回渡るごとに10センチずつ高さを上げていくことにします。10回渡って1メートルの高さになります。まだ大丈夫でしょうか。20回なら2メートルです。ちょっと勇気がいります。30回で3メートル。もはや渡れる人は稀でしょう。63回なら6メートル30センチにもなります。ほぼ、二階建て住宅の屋根の高さと同じです。とても平常心ではいられないでしょう。

大相撲九州場所2日目、横綱白鵬は、平幕の稀勢の里に寄り切られて敗れました。これによって今年1月から6場所かけて積み上げてきた白星が63で止まりました。双葉山の持つ歴代1位の「69」連勝にわずか及びませんでした。白鵬の実力からして、現在の相撲界には、五分にわたりあえる力士は見当たらないような気がします。ですから、双葉山の記録を抜くことは、十中八九間違いのないことだと、おおかたの人は確信していたかもしれません。しかし、「わずか及ばない」というその「わずか」や、「十中八九」を完全にする残りの「ひとつふたつ」は、周りが想像するより、本人にとっては、とてつもない壁のように思えたかもしれません。普通なら負けそうもない、これまでの対戦成績が11連勝中だった稀勢の里に完敗したのですから。

過去に1メートルや2メートルの高みに立っても、平常心を保って勝負をしてきた力士はたくさんいました。しかし、6メートルの高みを見たのは、双葉山と白鵬だけです。そこで平常心を保てたのは、やはり偉大です。それでも残念ながら、いつかはその高さから落ちる時があります。せっかく積み上げてきた高さも、目標まであと一歩及ばなかった。問題はその後の心もちです。双葉山は連勝が途絶えたあと、更に2連敗したそうです。白鵬は実は、昨年夏場所の14日目に琴欧州に敗れ34連勝目を逃しています。しかし、その後、平常心を取り戻し、奇しくも今年初場所の14日目、その琴欧州に勝ったのが63連勝の始まりでした。今回も連勝が途切れても、連敗はしていません。

正岡子規は言っています。「悟りとは平気で死ぬことではなく、平気で生きていくことだ」と。私たちは今どんな平均台を渡っているのでしょうか。もしかしたら、高さはあまりなくても、何度も落ちることがあるかもしれません。落ちても落ちても、平気で生きていくには、あせらず腐らず平常心を保つことが肝要です。平均台とは、バランスを保って演技することから名づけられたとか。平常心とはまさに常に心を平にして、バランスが保たれている状態のことです。

それでは又、12月1日よりお耳にかかりましょう。

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