法話 〜3分間心のティータイム〜イメージ

【第817話】 「監督の心を感得す」 2010(平成22)年9月1日-10日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第817話です。20100901.jpg

 長嶋さんが巨人軍の監督時代の嘘のような話です。あるチャンスが巡って来た時、監督でベンチにいた長嶋さんは、選手に指示を出すよりも早く、自らバットを持ってグラウンドに出ようとしたとか。

 高校野球で長嶋さんのような監督はいないでしょう。第一、試合中監督はグラウンドに出ることを許されません。ベンチでサインを送るか、直接選手に伝えたいことがあっても、控えの選手を伝令として走らせるだけです。それでも高校野球では特に監督の存在は大きいといえます。試合に臨むまでにどのような指導をしてきたかが、如実に本番で現れることがあります。試合でグラウンドに出られない分、普段選手とどれだけ心を開いて、ふれあっているかということも大切なことです。

 今年の夏の甲子園、第92回全国高校野球選手権大会で優勝したのは、沖縄の興南高校でした。沖縄勢として悲願の初優勝であり、しかも史上6校目の春夏連覇という偉業も成し遂げたのです。その興南の我喜屋優(がきやまさる)監督は、今年の春の選抜大会で優勝した翌朝、満開の桜の下で、選手たちにこう語りかけたそうです。「この花も、散っちゃうよ」と。自分たちの野球でいえば、「花」は「優勝」ということでしょう。いつまでも優勝という花に浮かれてはいられない。花が散るように、その評価や名声もやがて薄らいでいく。しかし、根がしっかりしていれば、また花を咲かせることができる。花を支えるのは結局目に見えない根っこであることを説き、沖縄に帰ってもう一度始めようと、選手と共にその時すでに、夏の花を思い描いていたのでしょう。

 我喜屋監督は、寮で選手と寝食を共にし、靴の脱ぎ方から挨拶の仕方までを指導しているといいます。挨拶や人付き合い、毎日の練習は、嫌でも逃げても追いかけてくる。嫌なことにも意識しながら慣れて「逆境を友達にする力」を養えと教えます。そして、「野球に限らず、小さなことを見ようとしない人には、見落としがいっぱいある。小さいことに気づける人は、大きな仕事ができる」と、小さいことでも全力でやり、約束を守ることを徹底してきました。

 たとえば、散歩でたばこの吸い殻を見て見ないふりをする人は、「おれは関係ねえ」という気持ちが働き、試合でもサインを見落としたり、カバーリングを怠ったりするようになるという指摘は、私たちの日常生活にもすっかり当てはまると納得させられます。

 さて、私たちの毎日の中でも、あまりに当たり前すぎて、意識すらしていない小さなことがあります、それは呼吸です。この一息ができなくなったらすべてが終わりなんだと意識しながら、景色を見たり、仕事をすれば、すべてが輝いてくることでしょう。仏さまという監督は直接日常生活のグラウンドに降りることはできませんが、このテレホン法話という伝令を遣わして、そのことを伝えています。小さな一息もなければ、命の花が散ってしまうという、監督の心をまさに感得してみましょう。

 それでは又、9月11日よりお耳にかかりましょう。

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