法話 〜3分間心のティータイム〜イメージ

【第805話】 「ノートを取る」  2010(平成22)年5月1日-10日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第805話です。

 「とる」という言葉には様々な意味があります。漢字も手元の辞書によると、27種類もあります。「手に取る」から「天下を取る」まで、実に広範囲です。調べて記録するという意味で、「ノートを取る」という言い方もあります。そのノートの取り方で興味深い話をお檀家さんの70代半ばの男性から聞きました。

 その方の小学生時代のこと。当時まっ白い紙のノートなど誰も持っていなくて、新聞紙を切って綴じたものをノート代わりに使っていました。黒い鉛筆で書いたのでは字が見えないので、赤い鉛筆で書いたそうです。6年生の時たまたま、地元出身でハワイに渡って成功した人が里帰りをした折に、6年生全員にノートをプレゼントして下さいました。生まれて初めて手にするまっ白いページのノートです。誰もが有り難くて、もったいなくて、とてもそのノートに字を書く気にはなれなかったそうです。

 今から60年以上も前の、戦前の話ですが、似たような話は今もカンボジアにはあります。今から18年前に私がカンボジアに行った時、粗末な校舎で授業を受けていた子どもたちには、ノートも鉛筆もなく、板状の石の「石盤」にチョークで文字を書いていました。一杯になったら、消してまた書く。当然記録には残りません。「ノートを取る」という表現は当たらないのです。

 それから何度かカンボジアを訪れ、学校の子どもたちにノートや鉛筆をプレゼントする機会がありました。みんなうれしそうに喜んでくれました。そのご縁が続いて現在は、カンボジアの子どもたちに絵本を贈るお手伝いをしています。この間、ハック・ソイ・トライ君という15歳の少年から写真入りの礼状が届きました。15歳ですが小学校5年生で、8人家族。本を読むのが大好きで、週に1回図書館に通っているそうです。将来は運転手になりたいという夢まで書いてありました。

 白い紙に鉛筆で書かれた現地の言葉は読めませんが、日本語訳が添えられたその手紙には、遠く離れても心を伝えられる、白い紙と文字の有り難さが滲み出ていました。ノートを取ることによって、字を覚え言葉を覚えられるようになります。ノートを取るとは、自分の未来を描くことにも繋がるわけです。5月は「子どもの日」があります。世界の困っている子どもたちの明日ために、私たちができることを進んで行いたいものです。決して、よその国のことは関係ないなどと、ノーと言わないようにしましょう。

それでは又、5月11日よりお耳にかかりましょう。

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