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【第798話】     「横綱脱落」     2010(平成22)年2月21日-28日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第798話です。

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 ドルゴルスレン・ダグワドルジという少年が、相撲に憧れ異国の地日本にやって来たのは16歳のとき。それから高校生活を送り、大相撲に入門し、わずか4年余りで、横綱朝青龍となるまでに出世したその才能・苦労は並のものではありません。

 それを割り引いても、今回の引退のきっかけとなった泥酔しての暴行騒ぎや、これまでの身勝手な行動や様々なトラブルは横綱としての品格以前に、人間性が問われるところでしょう。土俵上で強ければ何をやっても許されるというのは、どの国でも絶対にあり得ないことです。土俵で相撲を取るのは、人間です。だから、師匠と仰ぐ人に、相撲の何たるかを学び稽古をつけてもらうのです。師匠が機械なら、勝つことしか教えないでしょう。負けた時どうすればいいのかまで教えられるのは人間です。もっと言えば、土俵を離れても、人間としてどうあるべきかを示せるのが師匠です。

 さて、曹洞宗を開かれた道元さまは24歳の時、真の仏法を求め、その教えを授けていただけるまことの師匠を訪ねて、中国当時の宋に渡ります。800年も前のこと、命がけの渡航でした。異国の地とはいえ、道元さまの仏道に対する一途な姿勢は、同じ修行僧には伝わるものがあり、次々良き出会いを得ました。26歳の時、天童山景徳寺で師と仰ぐ如浄禅師に参ずることになります。

 ある日の朝の坐禅のとき、道元さんの隣で居眠りをしていた修行僧に向かい、如浄禅師は、「坐禅は一切の執着を捨てる修行なのに、居眠りをするとは何事か!」と一喝し、履いていた木靴を脱いで、その修行僧を打ち据えました。その瞬間、道元さんの全身を光のように貫くものが走りました。まさに、肉体と心とが自分の意識から脱落して、お悟りを得たのです。如浄禅師は「身心脱落、脱落身心」と述べ、道元さんの境地を認めました。

 朝青龍も道元さんも共に、志を立てて異国の地に渡ったというだけで、比較することの無理は承知です。ただ道元さんは坐禅を学んだだけではなく、如浄禅師から受け継いだ真の仏法なのだという、お釈迦さまは元より如浄禅師に対する畏敬の念もあって、さらに修行に励み、仏法を広めたのでしょう。朝青龍の不幸は、師匠の姿が見えなくて、勝つことだけに囚われた勝負の神様しか眼中になかったということでしょうか。その結果、身心脱落ならぬ、横綱脱落になってしまいました。

それでは又、3月1日よりお耳にかかりましょう。

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