法話 〜3分間心のティータイム〜イメージ

【第793話】   「虎の巻」         2010(平成22)年1月1日-10日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第793話です。

 あけましておめでとうございます。皆さんはどんな初夢をご覧になりましたか。初夢のようにめでたい夢ならいいのですが、時として夢にうなされることがあります。たとえば、学生時代の試験を受けている夢です。もはや残り時間がわずかしかないのに、数学の問題が解けなくて、ウンウン唸っている姿があります。とうとう解けずに、終了のベルが鳴った時、まさに目覚まし時計のベルに起こされて、「ああ夢でよかった」ということになります。

 確かに数学は苦手でしたので、今でも夢に出るのかもしれません。そして数学の虎の巻があればいいのにと思ったものです。でも先生は当然のことながら、虎の巻は勧めません。虎の巻に頼ると、考える力がつかない。自分の頭で考えて、問題を解かなければ意味がない。考える過程が大事なんだからというわけです。

 「虎の巻」は元々、中国の兵法の秘伝が記された書物だそうです。現代では「あんちょこ」などとも言われ、教科書に即した内容の解説・答えが書いてある参考書や何かの秘訣などを記してあるものを指します。toranomakijpg.jpg

 さて、私たちの人生においても、様々な困難や苦境に立たされたとき、どうしたらいいのか分らなくなることがあります。そんなとき、「虎の巻」があればと思わないわけでもありません。その「虎の巻」とは何でしょう。お経でしょうか、人生訓がぎっしり詰まった本でしょうか。どれも何かヒントを与えてくれることはあるかもしれませんが、ほんとうの答えは教えてくれません。教えてくれないというより、自分の手でつかんで納得するものでしょう。

 仏さまの教えをいくら解ったとしても、実践が伴わなければ絵に描いた餅です。どんなに苦しくとも、自らその身をその中に置いて、ほんとうの解決・解答が得られたとき、仏道の実践といえます。そこで難儀した経験こそが、自分自身の「虎の巻」として、今後の人生に役立つのではないでしょうか。

 寅年だから敢えて言いますが、安直に「虎の巻」は求めないようにしましょう。人生の「虎の巻」は自分で作るものです。「人生に 虎の巻はなし 悲しみや 苦しみにめげず 越えて(こた)よ」。どんな状況でも虎のような勇猛心を以って、堪えられなければ、まさに答えは出ません。いつか夢にうなされるだけです。今年一年皆さんの尊い汗や涙で、世界に一冊しかない「虎の巻」を編纂されることをお祈り致します。

それでは又、1月11日よりお耳にかかりましょう。

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