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【第790話】 「生前葬」  2009(平成21)年12月1日-10日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第790話です。
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 「生きているうちに香典をもらうのは人間の夢です」とは、某映画監督の言葉です。この夢を16年前に実現させた方がいます。松竹少女歌劇団の「男装の麗人」として一世を風靡し、女優・映画プロデューサーとして活躍した水の江瀧子さんです。彼女が78歳の誕生日を迎えるにあたり、「生前葬」を開いたのです。冒頭の言葉は、この時の弔辞の一節です。

 「生前葬」の最初は、「故人」となられた水の江さん自らが、「自分の写真や花で飾られた祭壇を生きているうちに見られるのは、とても幸せ」と笑いを誘う挨拶で始まりました。そして「本番」さながらに、弔辞もあれば、代表献花もありました。集まった芸能人ら約500人は果たして涙したのでしょうか。

 ユニークなのは、「出棺」の儀です。水の江さん自らが、歩いて退場したのです。その後、会場は模様替えされ、今度は78歳の誕生祝いを兼ねた「復活祭」に移りました。バンド演奏あり、歌ありの大賑わいです。一番しんみりしたのは、最後に水の江さんが、「ありがとうございました」を、4回繰り返したときだそうです。見事復活を遂げた水の江さんは、それから16年長生きされ、先月16日94歳で、ほんとうにお亡くなりになりました。

 生きているのに葬式をするなんて、縁起でもないと思うのは、普通でしょう。しかし、元気なうちにこそ、これまでお世話になった方々へ、きちんとお礼をしておきたいと考えるのも、素晴らしいことです。何より、死というものを具体的にイメージすることにより、今生きていることが、こんなにも有り難いものなんだと思えるはずです。

 別に「生前葬」を勧めるつもりはありませんが、一日の終わりに、死を意識して、今死んでも何も悔いがないかどうか思ってみて下さい。そして、翌朝、目が覚めたら、復活したこの身をほんとうに有り難く感じることでしょう。毎日が「生前葬」で、毎日が「復活祭」になれば、かなり充実した人生になるのではないでしょうか。

 因みに、水の江さんの「生前葬」のとき、葬儀委員長を務めたのは、森繁久弥さんでした。森繁さんは、「死ぬ時は莞然(かんぜん) として、にっこり笑って死んでやろう」と言っていました。充実した人生に裏付けされた言葉です。その通りに、森繁さんも水の江さんが亡くなる、一週間前の11月10日に96歳で亡くなりました。あの世で、ふたり揃って「知床旅情」などを合唱しているかもしれない姿に、私たちは合掌するばかりです。

それでは又、12月11日よりお耳にかかりましょう。

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