法話 〜3分間心のティータイム〜イメージ

【第780話】 「ほたる」          2009(平成21)年8月21日-31日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第780話です。

 「8月は死者を想う月」とある作家が言っていました。広島・長崎の原爆記念日そして終戦記念日があります。またお盆の行事も各地で行われます。戦没者追悼式では軍人・民間人約310万人が追悼の対象になります。更に、お盆を迎えて、私たちが手を合わせて偲ぶ精霊は数限りがありません。古(いにしえ)より現代までどれだけの人が、草葉の陰に眠っていることでしょう。

 愛する家族を残し、無念の思いを抱いて、最後を遂げた人。親より先に旅立った子ども。不慮の事故で別れを告げる間もなく突然逝った若者。大往生だったと見送られた老人。死者の姿は様々です。そして、死者を追悼する残された私たちの境遇も千差万別です。どんなに願っても、死んだ人とこの世で再び会い見(まみ)えることはできません。

 しかし、大事なことは、死んで何年経とうが、その人を忘れずにいるということでしょう。日々の生活に追われて、ついつい死んだ人のことは忘れがちになってという方もいるかもしれません。そういう方こそ、この8月「死者を想う月」に、亡き人に手を合わせて下さい。亡き人は「草葉の陰」にいると言いました。「草葉の陰」は「あの世」を表す言葉です。更に「草の葉の露」のように、はかないもののたとえでもあります。どんなに愛しい人でも、健康な人でも、いつか別れの日が来る。亡き人は、そのことを身を以って示し、しかも草葉の陰から見守って下さいます。

 「そこ踏むな 夕べほたるの ゐたあたり」という橘以南という人の句があります。日中ほたるを見ることはできませんが、草むらのどこかにいるのでしょう。夕べは確かにこのあたりにいたから、注意して歩きなさいということでしょうか。ほたるは成虫として生きているのは、せいぜい1-2週間だそうです。はかない命です。それを更に殺めないようにといって、目には見えないのに、気を配っています。

 そして、この句から草葉の陰に眠る無数の亡き人のことも浮かんできます。私たちも、目には見えない亡き人を想いながら、命のはかなさを感じ、亡き人の歩んだ道を踏みにじることのないように、心して生きなければと思わずにはいられません。ところで、橘以南という名前にあまり馴染みはないかもしれませんが、あの良寛さんのお父さんなのです。慈悲深い良寛さんの原点を見る思いです。因みに良寛さんには「ほたる」という渾名がありました。

それでは又、9月1日よりお耳にかかりましょう。

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