法話 〜3分間心のティータイム〜イメージ

【第762話】 「究極の平等」       2009(平成21)年2月21日-28日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第762話です。

 「好況よし、不況さらによし」とは昭和恐慌の逆風に立ち向かった松下電器産業(現パナソニック)の創業者松下幸之助さんの言葉だそうです。しかし、そのパナソニックも世界的な不況や円高の影響で3500億円規模の赤字になると発表しました。かくのごとく、連日100億円1000億円という赤い数字が、世間を塗りつぶし、何千人何万人の人員削減という数字が人々を不安に陥れています。底なしの不景気感が漂っています。

 無常の理(ことわり)を説くまでもなく、いつまでも同じ状態が続くとは限りません。都合の良いことが持続しないように、悪いことも断ち切ることができるはずです。そうであるなら、最悪は最善への出発点という見方もできます。

 世の中は、二つの面があります。良いこと、悪いこと。表と裏。下があって上があります。右の反対は左です。そして、生と死があります。良いことばかりなら、良いというほんとうの価値が分からないかもしれません。不況に陥って初めて、景気の良かったころの有り難さを実感します。だから不況を黙って受け容れなさいとは言いません。克服すべく最善を尽くさなければならないことは、言を俟(ま)ちません。どれだけ有り難さを念じつつ最善を尽くすかです。

 「有り難い」とは、文字通り「有ることが難しい」ということです。即ち、「当り前でない」とも言えます。夜も電気があって明るい。遠くへも車で簡単に移動できる。そんなことは当たり前のように暮らしてきましたが、決してそうではないのです。勝手に電気が点くわけもなく、魔法のように車が手に入ることもありません。

 そして究極は、生きていること、今息をしていることにも、何の不思議も感じないで、当たり前のように過ごしているということです。「死とは究極の平等です」これは、遺体を棺に納めるある納棺師の言葉だけに説得力があります。老若男女の別なく、貧富に関わらず多くの遺体と接してきた納棺師は、どんな生き方をしようとも、死は避けられず、どなたにも平等に訪れることをいやが上にも納得したのでしょう。

 平等なる死があるからこそ、今生きている有り難さをどなたも身に沁みて感じることができるはずです。そのとき、どんな境遇にあっても必死に生きようという思いに至ります。因みに「必死」とは、「必ず死ぬ」と書きます。

それでは又、3月1日よりお耳にかかりましょう。

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