法話 〜3分間心のティータイム〜イメージ

【第760話】 「ダメ出し」          2009(平成21)年2月1日-10日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第760話です。

 その道の業界用語に「ダメ出し」というのがあります。文字通り「駄目を出す」ことで、演劇で演技などの悪い点について注意をすることです。悪い点を注意するのは当たり前のことで、何の問題もありません。ところが注意したくても、注意しづらい時があります。「そんなに言うならあなたがやってみなさいよ」と言われたら、それまでです。自分に演技はできないけれど、役者の悪い点は分かるというだけですから。ましてや、大御所とか看板女優などと目されている役者に対して、簡単にダメ出しはできるものではありません。

 先日、民藝の看板女優である樫山文枝さんと仕事をする機会がありました。曹洞宗がお釈迦さまのお亡くなりになった時のことを、DVD映像で制作しました。そのナレーションを樫山文枝さんに依頼し、その録音現場に立ち会ったのです。少なからず、台本には仏教用語が出てきます。大女優といえども、普段耳慣れない言葉に、多少の戸惑いはあったかもしれません。

 でも、さすがです。わずかのリハーサルで、映像に合わせた見事な語りで、録音は進んでいきました。明らかに読み間違えたりすれば、ご本人も演出家も納得の上で、ダメ出しができます。しかし、微妙なアクセントの違いや、表現の雰囲気を指摘するというのは、余程演出に自信がなければできません。ましてや相手は大女優です。何をなさっても、それなりの雰囲気があり、それで結構ですという気になっても不思議ではありません。

 それでも何度かは、ダメ出しがあり、お互いのプロとしての心意気を見る思いでした。ともかく2時間ほどかけて、全編の収録が終わり、ほっとした時です。スタジオの樫山文枝さんから声がかかりました。「すみません、出だしの1ページをもう一度やり直しさせて下さい」。自らのダメ出しだったのです。確かに、録音の最初の頃は、ミスはなくても、どこか本調子ではなかったのかもしれません。だんだん読み込んでいくうちに、お釈迦さまの「おねはん(臨終)」」の場面に、気持ちが乗り移ったのでしょうか。その通りの見事な語りで、満足のいく作品になりました。

 自らダメ出しをするには、相当の勇気と自信が求められます。お釈迦さまの遺言の一つに「自灯明(じとうみょう)」自らの行いを灯として日々精進しなさい、というのがあります。自らのダメ出しも、「自灯明」といえるのではないでしょうか。それは常に最善を尽くすということでもあります。樫山文枝さんをダシにしたわけではありませんが、今回の「ダメダシ」という「出汁(だし」をよく味わって下さい。

それでは又、2月11日よりお耳にかかりましょう。

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